ミャンマーのオフショア開発の特徴

オフショア開発国を検討する際に、コミュニケーションや価格の比較と同時にどの国にするか?という大きな選択が必要となります。欧米と比較してアジアはコストパフォーマンスが良いという印象がありますが、実はそれぞれの国によって価格だけでは語ることができない要素が多くあります。それは言語であったり文化であったり、IT技術の発展レベルであったり様々です。

比較要素の多いオフショア開発国選びですが、少しでもスムーズに検討できるよう、オフショア開発に関する資料などから開発国選びの際に役立つ情報を国ごとにまとめました。

このページではアジアのオフショア開発国としてコストパフォーマンスの良さにメリットがあるミャンマーについて、国の基礎知識や特徴、日本語レベル、IT技術レベル、単価相場、メリットやデメリットについて紹介しています。

ミャンマーのIT技術レベル

ミャンマーでIT人材育成を提供するのは大学と民間教育機関で、7つのIT系の大学からは毎年およそ6000人の卒業生を輩出しています。しかし、パソコンはデスクトップ、インターネットはLAN接続という場合も多く、教育環境が完全に整っているとは言えません。また電源事情が不安定なこともあり停電時にシステムがダウンするという、根本的なインフラの問題もあります。

パソコンの価格もミャンマーでは一般の職業人の数ヶ月分の給与であること、またIT環境が整っていないので講師が不足していることなども、需要に供給が追いついていない現状があります。

このような理由から、技術的にもインドや中国、ベトナムと比較して、これから伸びていく国と考えたほうがいいでしょう。

参照元:ミャンマー国 IT 人材育成の可能性の基礎調査 業務完了報告書(PDF)(https://openjicareport.jica.go.jp/pdf/12289625.pdf

オフショア開発に必要な
コミュニケーションレベル

ミャンマー人の日本語学習者は増加傾向にあり、日本語能力試験(JLPT)の受験応募者数も2016年の約13,000人から2018年は約37,000人へと大幅に増加。この数は東南アジアでは第2位となっています。この背景には、アジア最後のフロンティアとしてミャンマーに進出する日本企業が増加し、それに比例して日本語の需要が増えていることがあげられます。

国立大学にも日本語学科があり、日本語を選択科目とする大学もあるほか、日本へ語学留学する学生数は2019年度の日本語教育機関実態調査によると、830人で全体の2%、国別で7位となっています。

参照元:令和元年度 日本語教育機関実態調査、一般財団法人日本語教育振興協会(PDF)(https://www.nisshinkyo.org/article/pdf/overview05.pdf

このようにミャンマーでの日本語教育は盛んですので、日本語でコミュニケーションができるエンジニアもいますし、今後はさらなる増加が期待できるでしょう。

ミャンマーのオフショアで
できる案件や技術

今後が期待されるミャンマーは、他国と比べてオフショア開発における経験はまだまだ浅いというのが現状です。ノウハウの蓄積が十分ではないので、上流技術は苦手であったり幅広い対応ができないこともあるでしょう。その点を踏まえて、人材育成も提供しながら共に成長していくというスタンスであれば、価格的にも将来的にもミャンマーは今後が期待できる良いオフショア開発の拠点となるでしょう。

ミャンマーのオフショア
開発の人件費、単価相場

ミャンマーの人月単価は以下の通りです。カッコ内の数値は昨年からの上昇率で、全体的に安価となっています。プログラマー以外の単価の減少は人材が増えてきたことを意味し、今後も人材の増加が見込まれます。またPMの単価がベトナムより高いのは、人材不足が原因のようです。

  • プログラマー:27万2,700円(+1.9%)
  • シニアエンジニア:37万3,100円(−1.5%)
  • ブリッジSE:41万1,500円(−15.6%)
  • PM:64万1,500円(−15.8%)

(★引用元:オフショア開発白書2021年版)

ミャンマーのオフショア
開発のメリット

プログラマーの単価が27万円ほどと、ミャンマーのメリットはなんと言っても価格の安さでしょう。アジア最後のフロンティアとして今後の価格上昇は避けられませんが、現状では他国よりも安い人材を確保できるため、当面のコストパフォーマンスは良い状態が続きそうです。

質の良いエンジニアも今後は増加していくことが予想され、クオリティーの向上も期待できますし、良い人材の増加は供給を増やしてコストを抑える効果もあるでしょう。

また日本語学習者の数も多く、日本語でのコミュニケーションが可能なエンジニアがいること、勤勉で穏やかな国民性も日本企業とプロジェクトを進める環境に適しています。

ミャンマーのオフショア
開発のデメリット

人材の増加とともに今後の成長が期待できるミャンマーは、オフショア開発のノウハウの蓄積はまだ浅いので、対応分野が広くないことがデメリットの一つです。上流工程の対応ができなかったり、大型基幹系案件などは、インドや中国の方が安価に済むこともあります。

またインフラ不整備もデメリットで、停電などにより作業の停滞や通信の遮断などのリスクがあり、スケジュールが遅れることもあるでしょう。政情不安も考慮することが重要です。

ミャンマーの基礎知識
- 人口、言語、国民性、
政治、治安、時差など

ミャンマーの基礎知識

ミャンマーの正式国名は、ミャンマー連邦共和国(Republic of the Union of Myanmar)で、首都はネピドーです。タイやラオスと隣接する面積68万平方キロメートルの国土に人口5,141万人(2014年9月、ミャンマー入国管理・人口省発表)が暮らし、主な民族はビルマ族が約70%、他に多くの少数民族が存在します。言語はミャンマー語で、主な宗教は仏教(90%)、キリスト教、イスラム教などです。

ミャンマーの通貨はチャット(Kyat)で、為替レートは1ドル=1852.15チャット(2022年4月11日、xe.com)となっています。

(気候)ミャンマーの気候は3つに分けられ、最も熱く紫外線の強い暑季(3月~5月)、季節性インフルエンザやデング熱が流行し、食中毒にも注意が必要な雨季(6月~10月)、そして最も過ごしやすい乾季(11月~2月)があります。

(時差)日本との時差は2時間30分遅れです。日本が正午の時、ミャンマーは午前9時30分でビジネスにおける連絡は比較的取りやすいでしょう。

ミャンマーへのフライトに関する
注意

注意したい点は、ヤンゴン国際空港における給油困難などによりこれまで全日空が行っていた直行定期便が運休となっていることです。搭乗者数が少ないこともあり、一定人数が集まれば就航を決定する募集型で運行を行っているとのことですので、出張や駐在による移動が容易でないことを頭に入れておきましょう。

参照元:在ミャンマー日本国大使館(2021年5月時点)(https://www.mm.emb-japan.go.jp/profile/japanese/what-news/2021/what-news21.html

日本とミャンマーの関係

日本とミャンマーは良好な友好関係を築き、2014年に外交関係樹立60周年を迎えました。日本はこれまでミャンマーの民主化、経済改革と国民和解の進展を後押ししており、2016年のアウン・サン・スー・チー国家最高顧問による新政権発足後も、官民をあげて全面的に支援しています。

ミャンマー在留邦人数は3,505人(2020年12月時点)で、在日ミャンマー人数は32,049人(2019年12月末時点)となっています。公館はヤンゴンに在ミャンマー日本国大使館があります。

ミャンマーの経済

ミャンマーの主要産業は農業、天然ガス、製造業で、名目GDPは約772億ドル、1,441ドル(共に2020/21年度、IMF推計)となっています。経済成長率と物価上昇率はそれぞれ5.7%と6.2%(共に2020/21年度、IMF推計)。日本は輸出において主要貿易相手国の一つであり、また主要援助国でもあります。

ミャンマーの政治体制と治安に
ついて

政体は大統領制で共和制、ウィン・ミン大統領を元首に、アウン・サン・スー・チーが国家最高顧問と外相を任務しています。

長年の民主化運動を経験してきたミャンマーは、少数民族や宗教間の衝突やデモ、軍や武装組織の対立などがあり、2021年2月のクーデター以降は、政情不安や経済悪化、国軍と民主派の衝突などで犯罪が発生しています。タクシー乗車や歩行中にスリやひったくりで邦人が被害に遭うケースもあるため、出張や駐在の際には十分な注意が必要です。特に夜間の独り歩きや女性単独でのタクシー利用などは、避けるようにしましょう。通常のタクシーは料金交渉制ですので、配車アプリから利用することをおすすめします。

参照元:外務省海外安全ホームページ (https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcterror_018.html

まとめ

 

アジア最後のフロンティアとして将来が期待できるミャンマーは、オフショア開発としてはまだ成長過程にあります。しかし優秀な人材も育成されていますので、すぐれたエンジニアを確保できれば大きなコスト削減ができます。日本語学習者も多く真面目な国民性は、日本企業との相性もいいでしょう。

技術不足やインフラ不整備、政情不安などをしっかり理解して、共に成長していくビジネススタイルであれば、今後の期待ができるオフショア拠点となりそうです。

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